歯周病で目の下から膿がでる?
今回のテーマは、比較的良く見かける症状でもある”目の下が腫れている”です。
これは、見た目で大体診断できます。
写真は右の頬が腫れて膿が出た10歳のトイプードルちゃんです。
一見、皮膚に問題があるのかと思いますが、
『目の下が腫れて膿が出た』『高齢』『重度の歯周病を患っている』場合、
そのほとんどが歯周病によって歯の根っこが膿んでしまっていることが原因です。
お口の中を見てみると…
10年分の歯石で歯の表面がみえなくなっています。
そして、歯石の脇から膿が出て『歯槽膿漏』になっています。
この状況だと全身麻酔をかけて、まず歯石を除去してみないと歯と歯周組織の状況がわかりませんので、診断はもとより治療方針の決定もできません。
歯石を取ってみると…
歯を支える歯周組織が破壊されてしまい、歯の根っこが露出しているところが沢山認められます。
そして、引き続き顔が腫れた原因を探ります。
『歯周プローブ』という歯科用の器具を膿が排出した瘻管(ろうかん)に沿わせて挿入してみると…
そして、そのままレントゲンを撮ります。
そうすると原因の歯の根っこまで『歯周プローブ』が到達しているのが確認できます。
つまり、膿が出てきた原因は上あごの一番大きな歯だとわかります。
これにより、
重度の歯周病になってできた深い歯周ポケットが原因で顔が腫れたという事がわかります。
歯周病の重要性を知っている事が大切!
細菌の溜まり場になっていた歯根を残したまま、抗生物質でごまかしていても完治しません。
ですので、この様な重度の歯周病になってしまった歯は抜歯以外に治療方法はありません。
飼い主様は、今まで歯磨きをしていなかったのですが、今回をきっかけにこれから歯磨きを頑張るとおっしゃっていたので、残せそうな歯は適切な治療を行い残すことにしました。
写真は、処置後のお口の状態です。
どうでしょう?抜歯しましたが、思ったより綺麗じゃないでしょうか?
当院では、抜歯時は必ず全身の痛み止め注射と局所麻酔を併用していますので、これだけ抜歯しても帰宅したらご飯が食べられます。
抜歯したところも全て、細く溶ける糸で縫合していますので、綺麗に治ります。
『外歯瘻』(がいしろう)もしくは『眼窩下膿瘍』(がんかかのうよう)
ダックスちゃんを筆頭に小型犬にとても多くみられる病気です。
重度の歯周病の結果起こる病気で、高齢の犬に多く認められます。
その為、飼い主さまが麻酔を心配されて手術に踏み切れないことがありますが、ちゃんと麻酔前の全身検査を行うことで、安全に全身麻酔をすることができます。
処置後に『無臭』になった愛犬、『お口の痛みから解放』された愛犬を想像してみてください。
当院では、日常的に高齢の犬を安全に麻酔をかけています。
抗生剤で何度も再発を繰り返している子は是非ご相談ください。